リゴの小冒険 その6

私は給水の発表会場に行く車の中で、幼少期から今に至るまでを思い出していた。

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僕はリゴ、11才。
科学者になるためにもう勉強をしてる。
もともと田舎に住んでたから、たのしいきかいこうぞうの授業じゃいっつもビリだった。
でも、デリオ兄ちゃんのためにいっつも勉強してたから、最近はけっこうできるようになった。
勉強ばっかりしてたから、結構いじめられた。でもエアロはかばってくれた。そのおかげでエアロも友達が少なくなっちゃったけど、気にしないでがんばれってはげましてくれた。
デリオ兄ちゃんの所へは時々遊びにいくけど、いっつも給水がじゃました。僕はあのきかいが大っきらいだ。
僕は今、中等部へ進むための勉強をしている。普通の中等部だったら何もしなくても行けるけど、機械のことを勉強するためにはせんもんの中等部にいかなきゃだめなんだ。
だから僕は、デリオ兄ちゃんのためにがんばる。

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僕の名前はリゴ、15歳。
機械専攻中等部はとっても勉強がむずかしかったけど、給水を創るために必死で勉強した。
友人に『給水を創る』と公言して以来、クラスでは完全に孤立してしまったけど、普通中等部に行ったエアロはいつものように僕に気にするなと言ってくれた。
そしてある日、エアロはいつものように僕の科学室に
(機械専攻学生には、一人一つの科学室の使用許可が下りる。といってもものすごく狭いが)
入ってきた。
エアロ「ようリゴ、また模型実験か?」
リゴ「ああ、今回は今使用されてる給水をちょっと改造したやつ。これから動かすんだけど見る?」
エアロ「見るに決まってるだろ?早く動かしてくれよ。」
僕は模型の電気コードを電源に接続して、スイッチを入れた。
給水の模型が仮想の海、水槽からホース伝いに水をタンク内にくみ上げ、山頂(砂と粘土で作った)にある放水バルブに水を運び…
タンクが破裂した。
リゴ「…。」
エアロ「…。」
水を豪快にかぶった僕らはしばし沈黙した。
エアロ「ぶはっ!破裂かよ!」
リゴ「う、うるさい!何がいけなかったのかな?」
僕が模型の残骸をいじっていると、エアロがいつもと違う声で喋った。
エアロ「リゴ、屋上行こうぜ。」
リゴ「?いいよ。」
僕らは屋上に着くと、いつもの定位置、デリオ兄ちゃんがいる山の見える場所に座った。
屋上に来るときは、大抵何か話をするか昼休みかだ。
エアロ「リゴ、兄ちゃんの居る山見えるよな?」
リゴ「ああ。」
風が一つ吹き抜けた。
エアロ「俺、高等部行かないよ。」
僕は飛び上がった。
リゴ「なんで?だって、僕らは兄ちゃんを…」

エアロ「リゴ!」
今度は大きい声にびっくりして飛び上がった。
エアロ「確かにお前はあの時、デリオ兄ちゃんを救うために科学者になると言った。けど、俺は違う。
気づいたんだ。リゴは言ったよな?何かを探して、考えて、見つけるのが冒険だって。今お前は、デリオ兄ちゃんを救うために給水を創るっていう冒険をしてる。
けど俺は、俺の冒険を見つけたんだ。
じゃあな。気にしないで頑張れよ。」
僕はしばらく、そこで山を見ていた。
ぼろぼろ泣きながら。

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