リゴの小冒険 その5 兄ちゃんはゆっくり、幼い僕達にわかるようにくだいて話してくれた。 デリオ「なあ、川ってすっごく大きいよな?だから造る為にはすっごく大きな力が必要なんだ。 この給水っていうのは、そういうすごい大きな力を持ってる。この給水が故障したら、その力はそこらへんに飛び散って大変な事になるんだ。 つまり、川がこの給水から溢れ出してくるんだ。 だから、故障しないよう誰かがにずっと見張ってなきゃいけないんだ。」 兄ちゃんの顔は、絵本を読んでくれた時みたいに優しかった。 けど、雨が降る前の空みたいな感じだった。 デリオ「その誰かっていうのに、俺が選ばれたんだ。な?すごくないだろ?給水って、誰か一人の人間を傍に置いておかなきゃ動いてられないんだ。」 エアロ「…兄ちゃん、もしかしていなくなった日からずっとここにいたの?」 デリオ「ああ。」 リゴ 「ずっと、ずっとこのきかいを見てたの?」 デリオ「そうさ。」 その時、給水から変な音(今思うと、あれは警告音の一種だったのだろう)がした。 デリオ「わるいな、見送りには行けそうもないけど、お別れだ。」 リゴ 「もう?」 デリオ「給水が呼んでるんだ。放っておくとお前らまで危険な目にあっちまう。さ、早く帰るんだ。」 僕達はしばらく黙って階段を上った。 出口が見えかけたあたりでエアロが口を開いた。 エアロ「兄ちゃん、もう絵本よんでくれないかな?」 リゴ 「…たぶん、よんでくれないよ。」 それっきり、僕達は家に着く前まで一言もしゃべらなかった。 ****************** でもぼくはエアロにいいたことがあったから、いえにはいるまえにはなしかけた。 リゴ 「ぼく、かがくしゃになる!」 エアロがびっくりしてこっちをみた。 かおに『どうして?』ってかいてあった。だからぼくは、せいいっぱいのことばでいった。 リゴ「きゅうすいがあるかぎり、兄ちゃんはずっとあそこにとじこめられたままなんだ。そんなの、おかしいよ! ぼくたちとあそんでくれないし、ほかのこともできないし、ごはんも、おふろも、ずっとあのなかですることになるんだ。 それに、きゅうすいがこわれたら兄ちゃんは… まるで兄ちゃんがわるものみたいじゃないか! だから、ぼくはかがくしゃになって、ぜったいにこわれないきゅうすいをつくる!」 ****************** と、日記はここで終わっていた。 それからと言うもの、私は本当に科学者になるべく努力した。 というのも、 ?「リゴさん、そろそろお時間です。」 おっと、もう行かなければ。 私の創った『新しい給水』の発表会があと一時間後に迫っている。 |
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