よもぎ号に乗って。 僕は今、よもぎ号という名の寝台列車に乗っている。 食堂車で飯を食っていて、気分は上々だ。 飯はうまい、景色もいい。たまには飛行機じゃなくこういうゆっくりした移動もいいものだ。 車窓からはきれいな銀世界を望むことができた。そろそろ寝台車に戻って一眠りしようと思った矢先、向かいの椅子に2人の人が腰掛けた。 一人はいかにも英国紳士気取り、といったふうな服装の男。ステッキの置き場所に困っている。 もう一人は女の子、自分の身長と同じぐらいの大きさの人形を腕にかかえている。 そして英国紳士気取りが僕に話しかけた。 英国男「そこのあなた、私の懐中時計をしりませんか?」 僕は思わず吹き出しそうになった。英国紳士に懐中時計、まさにこいつは英国紳士気取りだと感じたからだ。 僕「しりません。」 なるべくそっけなく答えた。早く寝台車に戻りたかったからだ。 女の子「私の。」 僕「え?」 女の子「ちがうの、あの時計は私のものなの。」 言っている意味がよく飲み込めなかった。 英国男「ああ、そうだったね。ごめんよ。」 そしてよもぎ号は変形した。 僕&英国男&女の子「なぜっ!」 よもぎ号「それが俺のライフスタイル。」 なんと、あろう事かよもぎ号が変形しだした! 女の子「早く逃げないとぺしゃんこになってしまうわ!」 僕は納得し(なぜか納得できた)、窓からの脱出を試みた。しかしどうした事だろう、窓は全く開こうとしない。 僕「うおー!」 妻のさより「うおーじゃないわよ!」 僕「えっ?」 そこで初めて、それが夢だと気がついた。どうやら相当うなされていたらしく、寝汗をびっしょりかいていた。 さより「あなた朝ごはんは?」 僕「いらん、列車で食う。」 そう、僕はこれから『よもぎ号』という列車で北海道まで出張に行くのだ。 僕はわくわくしていた。なんせ寝台列車などに乗るのは生まれて初めてだからだ。 そう、乗ってる間もわくわくしていた。 食堂車で、英国紳士風の男と、大きな人形を持った女の子が向かいに座るまでは…。 |
SEO | [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送 | ||