第1話 地震雷火事おっさん(5)


いきなりフランシスが起き上がった。
「こ、殺される!」
言うや否や懐から携帯電話を取り出した。
「殺される?誰に?」
レヴレフはフランシスの顔を見て言った。フランシスの顔は蒼白で歯の根がかみあわずガチガチと音をたてている。
「あ?なんだ、chopsの腰抜けどもか…。」
相手が恐怖の対象で無いと確認すると、あわただしい手つきで携帯を開いた。
「電波は…あるな、発信履歴で…。」
「おい、喧嘩なら買うぞ。」
キートはフランシスの手から携帯を取り上げ、取り返そうと手を伸ばしたフランシスの額に左ストレートを命中させた。
フランシスは再び床にのびた。
「誰が腰抜けだって?」
フランシスの襟首をつかみもう一発叩き込もうとしたが、レヴレフが制したのでぱっと手を離した。
「すまん、うちの部下は気性が荒くてね。ところで『殺される』って言っていたが。」
フランシスはまた起き上がり、キートから携帯電話を取り返すとボタンを2,3回押して耳にあてた。
「悪魔だ、悪魔が出た。室内犬をいじめにきただけなのに…。あ、もしもし?じいさんの家に車を頼む。大至急だ。」
それだけ言うと電話を切った。なにやらそわそわしている。

「ミサキ…どこへ行ったんだ。」
一晩明けても帰って来ない娘の身を心配し、父親は暖炉の前をうろうろしていた。文字通り心配で夜も眠れなかったため、目にはくまができていた。
2階から降りてきた母親は、父親が結局一睡もしなかったのかと驚いた。
「あなた…。」

キートは落ち着き無く室内をぶらぶらしていた。
電話を切ってからフランシスは一言も喋らなかったので、結局『悪魔』の正体はわからなかった。
「なんか忘れてる気がするんだ…。」
もやもやしながら独り言をつぶやいたキートの横を、何かが横切った。ここのじいさんの飼っている犬だ。キートはやる事が見当たらなかったので、とりあえず犬を追った。
ソファーの横を通り過ぎ、食卓テーブルの下をくぐったあたりで見失ってしまった。だが、それよりも気になる物が食卓テーブルの上にある。
「レヴレフ。」
「ん?」
レヴレフはフランシスの横から動かずに返事を返した。
「この家のじいさんって、確か酒飲むと人柄が変わるっけ?」
「ああ。」
フランシスの首がキートが『じいさん』と言った時食卓テーブルの方へぐりっと動いた。食卓テーブルの上には酒瓶が2,3本転がってる。
レヴレフとキートは大体事態を把握した。
「じいさんの酒乱か…。」
「ここのじいさんは小動物の狩りが趣味だから、散弾銃を持っていたな。」
酒を片手に散弾銃をふりまわすじいさんの姿を想像して、2人は少しいやな気分になった。
「そういう事だ、俺はもう帰るぜ…。」
レヴレフの車の前に、黒い高級そうな車が止まるのが窓から見えた。

「ミサキはいつからああいうふうになってしまったんだ?」
ミサキの父親は起きたばかりの母親に愚痴をこぼしていた。
「進路も好きにさせてやったし車も買ってやった。習い事だってさせて…ん?」
父親は天井を見つめ、考え込んだ。母親はその姿を見てどうしたのかと心配した。
しばらくして父親の口が開かれた。
「あの習い事は、させるべきじゃなかったかもしれん…。」

ミサキは苛立っていた。後部座席にごろりと横になりなって、外でちらつく雪にすら腹をたてていた。
と、車のエンジン音が通り、近くで止まった。起きてみると、いかにも高級車というようなピカピカの黒い車が止まっている。そこに黒いスーツの男が家から出て近づいていった。
ドアがひとりでに開き、男が乗り込むとドアも閉めないまま走り去っていった。
「なにあれ?」
気を取り直して寝転がりなおすと、足元のほうから大きい音が聞こえた。それは何かが破裂したような、短い音だった。
何かと思い、ミサキは足の向いていたほうのドアをあけて外に出た。

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