〜 二五一 〜 02 体全体の神経が恐怖を感じている。この電車はまずい。 恐怖で体が硬直していたが、なんとか後ろに一歩踏み出せた。 すると、俺が上ってきた階段から音がする。 大きめの羽虫が耳のそばを横切るような音だ。 緑色の人型が1人横を通り過ぎた。その人型はさらに歩を進め、電車に乗った。 いや、乗ったんじゃない。電車のドアから先の空間に『転送された』というかなんと言うか、一瞬消えて、逆さになった電車の床の上に現われた。足から徐々にグラデーションするようにだ。 その光景を見て唖然としていた俺の隣を、1人、また1人と緑の人型が通り過ぎてゆく。 振り向くと、今まで1人もいなかったホームに緑の人型がびっしりと整列している。 そしてその人型は次第に波となって電車の入り口に押し寄せた。 やばい!巻き込まれる! 巻き込まれたら電車に乗せられる。それだけは嫌だ。何か嫌な予感がする。 だが、大勢の緑の人型はもはや一つの塊と化していた。 もうだめだ。 俺はなすすべがないと思い、立ち尽くした。緑の人型はこちらが見えていないのか、そのまま向かってくる。 そして、俺をすり抜けていった。 俺の手足を素通りして、どんどん電車の中へ転送されてゆく。 電車が満員になり、ホームには俺1人が残された。 電車はまた、黒い空へと落ちていった。 「…ここはどっか別の世界なのか?」 触れることの出来ない人の大群。つまり俺とは全く異なる法則の元にある物。 そんな物があるとすれば、それはいつもいる空間とは全く別の世界なんじゃないか? と俺は推測したのだ。 だとすれば…俺はこれからどうすりゃいいんだ? |
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